2016.01.21
本紙記者、義勇兵宿舎に体験宿泊

「義勇兵見習いは銀貨10枚の支度金が支給されると言っても、職業を修めるためにギルドに8シルバーの上納金を納めたら2シルバーしか残らない。しかも、正規の義勇兵になるためには20シルバーもかかる。一体、それだけの金を稼ぐまで、どんな暮らしをすればいい。宿を借りるだけでも一晩50カパーはするというのに」

 義勇兵の追加募集開始を知らせる張り紙の前で、そんなふうに立ち話が聞こえた。

 確かに義勇兵が得られる様々な特典は、正規の義勇兵向けに限られ、義勇兵見習いはその対象外となることが多い。しかし義勇兵見習いの身で利用できる制度が皆無かと言えばけしてそんなことはない。たとえば、義勇兵宿舎もそのひとつだ。
 南区西町にあるこの宿舎は、一部屋一泊10カパーという格安の値段で義勇兵見習いに住居を提供している。「ひとり」でなく「一部屋」なのが重要だ。部屋には四人部屋と六人部屋があるが、部屋の広さはどちらも同じ。何人で泊ろうとも一泊の値段は変わらない。パーティの構成にもよるだろうが、同性だけのパーティなら、全員で一泊10カパー。生活費はかなり圧縮できるはずだ。

 先日、義勇兵団の厚意で、記者はここで一晩を過ごすことができた。
 建物はかなり古く、寝具等の設備も値段相応と言ったところ。正規の義勇兵となればここを無料で利用できるらしいが、さすがに20シルバーの団員章を購入できる者がここに泊りたがるとは思えない……ただし、とある一点をのぞいて。

 それは共同浴場の存在だ。
 そこでは、なんと暖かいお湯がなみなみとたたえられ、宿泊者は時間内であれば好きなように利用できる。サウナならともかく、浴場の設置された宿を10カパーで利用できるというのは破格と言っていいだろう。一日の終わりにこの風呂が待っていると思えば、毎日の辛い戦いもきっと耐えられる。そう思わせてくれる湯であった。

 そうそう、少なからぬ女性の義勇兵志願者は、あらくれ男どもが寝泊まりする傍での入浴を不安に思うかもしれない。しかし、その点も心配は無用である。いかなる原理によるものか、浴室内は、常に濃い霧が立ちこめている。これならば不埒者にのぞかれる心配は皆無であろう……何? のぞきを試みて失敗したんじゃないかって? そのような事実は一切存在しない。

本紙記者
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